研究概要 |
環境問題の高まりと共に、環境負担の削減が不可欠との認識が高まっている。この問題を解決するために、一品種としては少量であるとしても総量として環境負担が大きいファインケミカルズ及び大量生産を基盤技術とする石油及び石油化学におけるプロセス転換等のグリーン化学的製造方法の確立が急務になっている。本研究は、この一環として、硫酸等の液体酸を触媒とする酸触媒プロセスの固体触媒化を採り上げた。特に、嵩高い有機物の関与する有機合成反応に着目し、メソポーラス材料及びゼオライトの触媒機能を検討し、固体酸触媒が備えるべき条件の明確化を試みた。 1.メソポーラス材料にゼオライト構造を導入し、水熱安定性、機械的強度の改善と固体酸性を併せ持つAl-MCM-48-BEAの合成に成功した。この材料は、メソ細孔とゼイライトの特徴であるミクロ細孔を併せ持ち、水熱安定性、機械的強度および固体酸性が高いことが確認された。 2.Cage型細孔を有する一次元12員環ゼオライトSSZ-60の合成を行った。テンプレートとしてN-ethyl-N-(3,3,5-trimethylcyclohexyl)pyrrolidinium hydroxide ([ETMCHP]^+OH^-)を用いた。この際、cis and trans比に大きく依存し、等量混合物のみがSSZ-60を生成した。 3.SSZ-60を用いた多環芳香族炭化水素、ビフェニル(BP)およびナフタレン(NP)のアルキル化を試みた。BPのアルキル化においてはイソプロピル化では形状選択性が観測されなかったが、嵩高いアルキル基を生成する1-ブテンおよび2-メチルプロペンを使用したsec-およびtert-ブチル化においては最も小さい異性体である4,4'-sec-および4,4'-tert-ブチルビフェニルの選択率が向上し、形状選択性が発現した。同様の結果がNPのアルキル化においても観測された。これらの結果は、ケージ構造に基づき比較的大きな細孔を有するSSZ-60の特徴であり、形状選択性がゼオライト細孔内における立体的相互作用により発現することが裏付けられた。 4.12環及び14員環ゼオライトによる多環芳香族炭化水素のアルキル化における形状選択性に関する総合論文としてまとめた。
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