研究課題
昨年度までの考察により,水中における高電圧パルス放電によるコンクリートの破砕、ならびに骨材とモルタル、あるいはセメント硬化体との剥離の原理は次のようにまとめられる。すなわち、(1)パルス電流は絶縁破壊強度の最も弱いコンクリート内腔劇中の気相を伝って流れ、結果として空気の絶縁破壊の後に大電流が生じて空気のプラズマによる大膨張がコンクリート内に亀裂を生成する。そして、(2)高電圧パルス放電による極短時間における空気のプラズマ化、および水の気化によって励起された水中衝撃波がコンクリートに作用すると、その伝播における骨材とその周囲との境界面で透過・反射が発生し、境界面に作用する引張力によって密度(音響インピーダンス)の相違する物質の剥離を促す。本年度は、これらのことを確信的なものとするために、モルタル部分は一定の性質を持ちながら、粗骨材種を変えたいくつかのコンクリート供試体を用いて破砕実験を繰り返した。その結果、密度・吸水率ならびにこれらに伴って変化する音響インピーダンスの異なる粗骨材を用いたコンクリートでは、破砕の進行過程において、モルタルの持つ音響インピーダンスとの相対的差異が大であるほどモルタルと粗骨材との剥離は顕著であることが確認された。また、破砕過程の初期においては、この粗骨材の対モルタル相対音響インピーダンスの影響がみられることに加え、さらに粗骨材の粗密性もまた破砕進行性に影響していることが推察された。これらの実験から、粗骨材の対モルタル相対音響インピーダンスはプラズマ膨張による水中衝撃波の伝播形態に影響しており、モルタルと粗骨材との境界面反射がその剥離を促すものとほぼ断定できる。一方、粗骨材の微細空隙中に存在する空気や水の絶縁破壊の頻度に直結するものと考えられる。つまり、空隙が多いほど、高電圧により絶縁破壊を生じる確率は高くなることを意味すると考えられる。
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