研究概要 |
多孔性金属錯体は、規則的に配列したナノサイズの細孔を持つ結晶物質であり、優れたガス吸着能を持つ。配位結合の柔軟性や、配位子分子が持つ自由度により、ガス分子の大きさや形に応じて骨格構造を変化させながらガス分子を吸着する機構が、効率的なガスの吸着や分離には重要である。本研究では、SPring-8の高輝度放射光を用いた粉末回折法とMEM/Rietveld法を始めとする構造解析法を駆使して、構造柔軟性を持つ多孔性金属錯体のガス吸着状態における、結合形態までも含めた精密な構造情報を得る方法を確立するとともに、この物質群の吸着機構を解明することを目的とする。 本年度は、Interdigitated型多孔性金属錯体[M(ip)(bpy)]n(M=Zn, Mn, Ni, ip=isophthalic acid, bpy=4,4'-bipyridine)のapohost状態の結晶構造解析を行った。始めに、単結晶X線回折により既に構造が解かれているZn化合物を、未知構造として解析した。プログラムDICVOLにより結晶系、格子定数の候補を求め、Le Bail解析を行った。得られた積分反射強度を用いてシミュレーテッド・アニーリング法により初期構造モデルを得た。Rietveld解析により得られた構造は単結晶X線回折の結果と良く一致し、ここで用いた未知構造解析の手法がこの系に対して有効であることがわかった。同様な手法により構造未知なMn化合物の解析を行った。回折データはZn化合物と同様な三斜晶の結晶格子で指数付けできた。初期構造モデルとして、配位子分子がMnイオンと結合し、細孔が形成されている妥当なものが得られ、現在、Rietveld解析を進めている。今後、3つの物質の結晶構造を比較するとともに、ガス吸着状態の構造も調べ、金属の違いによる骨格構造の柔軟性とガス吸着特性の関係を明らかにする予定である。
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