研究課題/領域番号 |
21510116
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
渡部 祐司 愛媛大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (20210958)
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研究分担者 |
猶原 隆 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (50093935)
前原 常弘 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (40274302)
青野 宏通 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (00184052)
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キーワード | 発熱磁性体 / リポソーム / 誘導加熱 / マグネタイト / ドセタキセル |
研究概要 |
初年度の実験として、発熱磁性体マグネタイトとドセタキセル(DOC)をリポソームに動じ包埋したDMLを新規に作成した。まず、ヒト胃癌腫瘍モデルに対して、DMLの抗腫瘍効果を検討するため、誘導加熱を付加した。【結果】DOC濃度が56.4μg/ml以上では、DML群で著明な抗腫瘍効果を認めたが、マグネタイトを含まないDL群ではDOCは564μg/ml必要であった。DML群で治療後28日の時点で有意な腫瘍縮小効果を認め、更に2ヶ月後の生存率でも有意差を認めた。治療後1週間の時点でのHE染色、TUNEL染色でDML群では経時的に腫瘍変得んにも細胞死が認められ、しっかりとマージンが確保されていた。それ以外の群では、腫瘍辺縁にもviableな細胞を認めた。Berlin blue染色でも腫瘍細胞死領域にマグネタイトの広がりを認めた。更に、所属リンパ節内にもマグネタイトの進展を認め、原発巣と同時に転移巣にも抗腫瘍効果を認めた。腫瘍移植周囲の皮膚には、火傷は認めなかった。【考察】DML群のみで有意な抗腫瘍効果が認められたことから、温熱療法と化学療法か動じに腫瘍局所で行われた結果、43℃という低温度帯においても、低濃度の抗癌剤の効果を増強し、更に温熱による火傷等の局所合併症も認めなかったため、安全かつ有効な抗腫瘍効果が期待できる。更に、腫瘍縮小の奏効率が高いと同時に、生存率も向上しており、その理由として転移巣に対する抗腫瘍効果も影響しているものと思われた。リポソームというリンパ流に流れ込み易い素材を用いて、その内部に温熱と化学療法という異なる抗腫瘍効果を発揮する素材を同時包埋する本法は非常に有用であり、臨床応用可能なものと考えられた。今後、リポソーム表面に抗腫瘍モノクロナール抗体を付加し、さらに選択性を高め、抗体そのものによる抗腫瘍効果も加味した新たな研究を行う予定である。以上の内容は、Int J Cancerに掲載される予定である。
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