研究課題/領域番号 |
21510116
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
渡部 祐司 愛媛大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (20210958)
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研究分担者 |
猶原 隆 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (50093935)
前原 常弘 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (40274302)
青野 宏通 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (00184052)
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キーワード | 誘導加熱 / DDS / 分子標的治療 / 温熱化学療法 / リポソーム / ナノ磁性粒子 / ドセタキセル / Her2/neu |
研究概要 |
外部エネルギーと分子標的を認識する磁性ナノ粒子を用いた新たな低侵襲癌治療法の開発のテーマで研究を行った。 我々は、磁性ナノ粒子(マグネタイト)に対する誘導加熱(470kHz, 1KW)を利用し在局所加熱による癌治療を検討してきた。今回、これは更に発展させ、直径100nm程度のリポソーム内に抗癌剤を封入し、同時に磁性ナノ粒子を包埋することで局所温熱化学療法が可能かどうかを検討することを第一の目的とした。更に、抗腫瘍モノクロナール抗体を前記リポソーム表面に結合させることで、腫瘍選択性と同時に抗体による抗腫瘍効果も期待するという複合治療の有用性を検討することを目的とした。 初年度には、リポソーム内に疎水性抗癌剤であるドセタキセルを封入することに成功し、ヒト胃癌細胞株を用いた抗腫瘍効果を検討し有用性を認めた。また、局所温を42-43℃にコントロールし、局所火傷も認めず安全性の高さを証明した(Int J Cancer 2009掲載)。 次年度には、リポソーム表面に抗HER2モノクロナール抗体を結合させ、HER2強発現胃癌細胞株を用いてマウスに移植し、磁性体と抗癌剤同時包埋しモノクロナール抗体を表面に付加したリポソームの局所投与による有効性と安全性を検討した。治療後1ヶ月で、腫瘍消失例を含めた極めて高い抗腫瘍効果を認めた。生存期間の有意な延長と、局所の火傷等の合併症も認めず極めて安全性と有効性が高いことが証明された。更に、組織の免疫染色やフローサイトメトリーによる検討では、Her2/neu強発現細胞の1週目の有意を減少とアポトーシスの広がりが認められており、治療後1週目でのGo/G1期細胞の減少も認められた。(Int J Oncol 2011掲載)。他に、論文には掲載しなかったが、リンパ行性のリポソームの広がりも認め、温熱化学療法による転移リンパ節への治療効果も認められた。 今回の研究期間中に有用な結果を得ることが出来たため、今後更に転移リンパ節や癌転移病巣への治療にも研究を広げて行く方針である。
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