研究課題
有機薄膜作製技術は、一般的にドライプロセスとウェットプロセスという二つの作製方法に大きく分けられる。スッパタリング法、化学気相堆積法(CVD)法、レーザーアブレーション法などのドライプロセスは。高温.高真空を有するため大掛かりな装置が必要となり基材と材料が制約される。一方、ゾルゲル法、キャスト法などのウェットプロセスは、常温・常圧下で簡易的に薄膜を形成できるが、系が不安定であるために膜厚や表面構造の制御に限界がある。近年、材料の静電的な自己組織化による薄膜形成法として交互積層法が、常温・常圧下で膜厚・構造制御に優れることから、様々な分野で研究が進展されている。本研究では交互吸着法の応用例として、ポリアニオンにPoly(Poiy(acrylic acid):PAAとPoiy(vinyl alcohol):PVAの混合溶液を、ポリカチオンにポリアリルアミン;PAHを用いた抗血栓性を有する交互積層膜を提案してきた。これまで材料表面のナノスケールでの微細構造と血液の付着性との関連に関する報告はほとんどないため、本研究では、材料表面の凹凸構造を制御することで表面凹凸構造と液滴の表面塗れ性との関係を調査した。特に本年度は、本研究課題では、交互着法の積層過程で形成される特異的な階層構造の表面構造を制御することで、反射防止特性と抗血栓性を合わせ持つ薄膜を開発した。抗血栓薄膜に反射防止効果を付与するには、基板の屈折率よりも低屈率を形成しなければならない。先述のとおり、我々が開発した血栓膜の表面構造は、特異的な襖型構造している。この特異的な襖型構造は、積層過程で高分子電解質の解離度と化学結合を調整することで、表面構造を制御することができる。本研究では、PAAとPVAの分子間水素結合を利用することで、ポリイオンコンプレックス体の形成を抑制し、傾斜屈折率をもつ階層的構造を見出した。これにより、反射防止効果を持つ抗血栓薄膜の応用が期待でき、医用工学に貢献できる技術である。
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