赤外線位置センサIRPSD(Infrared Position Sensitive Detector)の新規なアナログ信号処理回路について、回路を集積化したIRPSDの試作で協力が得られることを確認している企業の製造プロセスのSpiceパラメータを用いて回路設計を行った。また、電気信号入力が可能なアナログ信号処理回路TEGを試作し、評価した。この結果、試作した回路の特性が、シミュレーションで得られた特性とよく一致し、IRPSDの行、列の重心位置検出を行うことができる性能を有していることを確認した。また、上記、アナログ信号処理回路とサーモパイル出力の間に設置する必要がある増幅器に関しては、過去2年の研究開発で差動電流積分回路を提案し、設計、評価を実施してきたが、今年度は、実用化に対して問題になるオフセットについて検討を行った。オフセットにより増幅器の利得が制限される可能性が高いことが分かったので、新たにチョッパ方式差動電流積分回路を考案し、動作シミュレーションを実施した。この結果、チョッパ方式差動電流積分回路では、チョッピング周波数を適切に選ぶことで、実用上問題ないレベルまでオフセット量を低減できることが分かった。 増幅器の利得は目標値に達しなかったが、今後の最適化で改善できる見込みが得られたので、上記結果を踏まえて、各行、各列にチョッピング差動電流積分増幅器を設け、行と列の重心検出回路を内蔵した6×6画素のIRPSDのマスク設計を行った。マスク設計は、予定通り行えたが、協力企業の試作ラインの負荷増大に伴う長工期化により試作、評価は今回の研究期間内には終了しなかった。
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