弾性変形するポリシロキサンをマトリクスとして色素液滴を形成するためには、ポリシロキサン原液と混ざり合わない極性基をもつ溶媒が必要であることを予備実験で明らかにした。メタノールやエタノールなどのアルコールは、ポリシロキサンより屈折率が低く、光を液滴内に閉じ込めてウィスパリングギャラリーモードを励振することができないため、界面活性剤を溶媒として用いることにした。しかし、ロダミン6Gのメタノール溶液は粘度が高く、インクジェット装置から吐出することができなかった。そこで、この界面活性剤溶液をメタノールで20倍に薄めた溶液を吐出したところ、沸点の低いメタノールが吐出直後に気化してしまうため、ポリシロキサンゴムの表面には界面活性剤の液滴ができることが分かった。この界面活性剤の液滴は、ポリシロキサンゴムの表面上では扁平な楕円体状になっていたので、その上に硬化前のポリシロキサン原液を滴下したところ、表面張力によって自己形成的に球状の液滴へと変化した。原液に予め硬化剤を添加しておくと、そのまま硬化して、ゴム中に直径10~120μmの色素液滴が形成された。 このようにして作製した試料に、波長532nm、パルス幅5nsの緑色レーザ光を照射したところ、560~620nmの波長帯で、ウィスパリングギャラリーモード発振による周期的な発光ピークが観測された。ポリシロキサンゴムを圧縮して変形させると、液滴も圧縮方向に縮み、垂直方向には伸びて楕円体になった。その結果、共振器長が変化して、発光ピークが短波長側あるいは長波長側へと移動するのが観測された。
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