インクジェット法を用いて弾性ポリマー中で微小液滴を形成することに関し、前年度に確立した技術にもとづいて、液滴を1次元あるいは2次元的に配列させる方法を開発した。インクジェット法で吐出できる液滴は約80plであるが、ノズルから放出されてポリマー表面に着床するまでの間に溶媒のメタノールが蒸発して約4plになる。液滴内で光が周回するウィスパリングギャラリーモードによるレーザ発振を起こすためには、少なくとも30μm程度の直径(体積20plに相当)が必要と推定されるので、1ショットだけでは十分なサイズの液滴を形成することができなかった。したがって、モーター駆動のマイクロポジショナー上に置いたポリマーを連続的に移動させて周期的に液滴を吐出する方法は使えないことが分かった。そこで、一定距離進むごとに停止させて複数ショットの液体を同一の位置に吐出することにした。この方法によって、20~100μm程度の液滴を50~200μm程度の周期で1次元、2次元に配列させることができた。 隣り合う液滴どうしを接触させると表面張力により一体化してしまうので、各液滴内を周回する光が相互作用を及ぼす程度まで接近させることが困難であった。そこで、ウィスパリングギャラリーモードの結合を調べるため、シリコーン樹脂をモールド成型して複数のリング状流路を形成し、そこに充填した色素溶液による発光を観測した。リングを直線的に配列させると直進光が誘導放出を起こすため、リングは円周上に配列させた。リングの数を増やすにつれて発光強度が増大し、スペクトル幅が狭くなる誘導放出現象が見られ、リング内を周回する光が互いに結合していることを確認できた。
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