弾性表面波(SAW)デバイスは構造が簡単なため、複数の小型デバイスを集積化する微小化学分析システム(μTAS : Micro Total Analysis System)の有望な要素部品として期待が持てる。そこで、我々は新規の流体アクチュエーターを提案し、液滴駆動しかできなかったSAWアクチュエーターを連続流体の駆動への適応を可能とした。しかし、現状においては、SAW流体アクチュエーターの最適設計化までは至っていない。 そこで、平成21年度は、SAWと流体との物理的な相互作用に焦点を当てて、SAWを発生させる櫛歯電極(IDT : Interdigital transducer)の形状等をパラメーターにした流体駆動の実験データの収集し、そのデータを基に弾性力学と流体力学等を駆使して数値解析に用いるSAWの液体駆動モデルについて検討した。 実験においては、IDTの対数は駆動開始電力とは関係なく、IDTピッチのみにそれが関係することがわかった。ちなみに、水においては200μmのIDTピッチにおいて、最も効率良く流体を移動できることがわかった。これら実験データから、弾性表面波による流体駆動の様子を計算する方法として、界面の大変形や衝突時に発生する飛沫をも網羅できることから有限要素法ではなく粒子法を用いることに決定した。具体的には、弾性体表面に乗せた水滴の挙動を弾性体表面形状を変化させ水に分子間力と重力を与えて計算するモデルを使用することにした。このモデルを用いた数値解析については次年度に行う予定である。
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