本研究の最終目標は、ナノサイズの高集積回路を、生体分子の特徴(動的平衡など)を応用して実現することである。そこで、(a)磁性ナノ粒子を用いて素子の配向を制御すること、(b)新たな分子素子の開発を本研究の目的とし、09年度は1.磁性ナノ粒子の凝集の抑制と、磁場配向精度の向上、2.ポリプロリン・ナノロッドを応用した分子素子の開発と、ナノ粒子との複合化を検討した。 1.粒径20nmの磁性ナノ粒子が、従来は粒径2.3mmにまで凝集していたが、界面活性剤処理と超音波処理を組み合わせることにより、粒径130mmに抑えることができた。この粒子の分散液をガラス基板上に滴下して、ネオジム磁石を作用させた。SEM観察を行ったところ、磁性ナノ粒子は磁場配向して、マイクロスケールの構造体を形成していた。凝集の抑制によって、配向精度を従来の3倍以上に向上させることができた。磁性ナノ粒子は磁化による凝集が不可避であるので、マイクロスケールの構造体を用いてナノスケールの素子の集合体を作る工夫が必要と考えられた。 2.新たな分子素子の基本骨格としてポリプロリンに着目した。ポリプロリンは1ピッチ0.9nm(3残基)の剛直なポリプロリンIIヘリックスを形成することが知られている。ポリプロリンを利用した分子素子は報告例がない。ポリプロリンモチーフをもつペプチドA(RKP_4HP_4C)、ペプチドB(Fmoc-P_4HP_4G)などを固相合成し、HPLCで精製した。両者はエタノール中でポリプロリンIIヘリックスを形成した。ペプチドAは金ナノ粒子表面に結合し、蛍光色素修飾もできることを確認した。また、ペプチドBにCu^<2+>イオンを添加すると、Cu^<2+>とHis残基との錯形成によって会合することがわかった。この錯体はEDTAを加えると脱会合した。これらのペプチドは、分子素子の基本骨格として期待できる。
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