これまでの研究で、有機色素分子(チアシアニン)を水溶液中で自己組織化させることで、光励起で生成した励起子ポラリトンを数百μmに渡って室温で伝播させる分子ファイバーを合成することに成功した。今年度は昨年度に引き続き、ガラス基板上に分散したファイバーをマイクロマニピュレータにより操作して、ポラリトン伝播を利用した微小光デバイスの作成を行った。2本のファイバーを操作し、ポラリトンを一旦分岐させた後、再び結合させる構造を作成し、10ミクロンサイズのマッハ・ツェンダー干渉計として機能させることを試みた。作成した構造を分光測定した結果、干渉効果を観測することができた。しかし、その効果は非常に弱く、さらに構造の最適化を図る必要があることがわかった。 上記と並行して、コロネン分子の自己組織化により合成した分子ファイバーを用い、電気的に(電子・正孔注入により)ポラリトンを生成し、それを伝播させることを試みた。ITO基板上でコロネン分子を自己組織化させ、分子ファイバーを合成した。真空蒸着によりファイバーに金属電極(金、アルミニウム等)を付加した。電極に電圧を印加しながら高感度CCDカメラでファイバーの観察を行ったが、ポラリトン生成による発光を確認することができなかった。これは、電極からファイバーへの電子・正孔の注入効率が低いためと考えられる。蒸着法を改善するとともに、電極-ファイバー間に適切な電子・正孔輸送層を挿入することで高効率化を目指す。
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