研究概要 |
内陸開発途上国(LLDCs)と港湾を結ぶ陸上貨物輸送の安定供給を妨げるリスク要因を中央アジアでのインタビュー調査,現地視察,文献などで特定した.インタビュー及び現地調査はウズベキスタンとカザフスタンの二ヶ国で実施した.なお,リスク要因の特定は次年度の定量リスク分析の信頼性に大きく影響するため,プロンプトリストを援用することで正確を期した. 調査,分析の結果,LLDCs~港湾間の陸上貨物輸送は数多くのリスクに曝されていることが分かった.特に国境がリスクの発生源となっており,遅延,貨物の盗難,さらには国境警備隊らによるドライバーに対する賄賂の請求などのリスクが顕在化している.これらを含むリスクの存在はUNESCAPをはじめとする国際機関で指摘されていたものの,実態調査を経て指摘された研究は非常に少なく,その意義は大きいと考えられる.当初リスク要因として想定していた道路整備の不備による貨物損傷,鉄道施設の老朽化による遅延など,インフラの状態に起因するリスク要因は存在しているものの,比較的重大な問題ではないことも明らかになった.また,調査より上記のリスクは確率的に発生する問題であることが分かった.したがって,不確実性を考慮したリスク分析モデルを構築する必要があるという示唆を得た. リスクのインパクト推定のために必要な貨物の時間価値をケーススタディの対象候補ルートである中国天津港~ウランバートル間で推定した.これにより,国境での遅延は1日1TEUあたり約7万5千ドルの損失を発生させることが分かった.
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