研究概要 |
1.水利慣行の調査:水利慣行についていくつかの水利組合や行政での聞き取り調査を実施した。農業の形態が変化していること、香川用水や香川用水調整池・宝山湖などの整備がおこなわれたことから、統的な慣行にこだわらず新しい水資源の利活用方法が確立しつつあることがわかった。実態として、近年の渇水時にも香川用水をベースして宝山湖を始めとするため池の用水を相互に融通して大きな被害を出さずに済んでいる。その際に、直接的な水の融通でなく途中で河川を経由すると、ため池間の融通量が特定できないなど数量的な把握が困難であることが分かった。 2.洪水被害の調査:2004年に吉野川流域で戦後最大規模の洪水が発生するなど、早明浦ダムが吉野川の治水問題を解決したとは言い難い。年降水量の経年変化を見ると、むしろ多雨年と少雨年の差が大きくなっており、洪水と渇水に対する対策を変更する必要性も生じていることが分かった。 3.公平な水資源割当方法の理論的考察:これまで公平分割の理論研究においては分割対象に加法性を仮定していた。最近の論文Cloutier, J., Nyman, K.L., Su, F.E.(2010):"Two-player envy-free multi-cake division", Mathematical Social Sciences 59, 26-37 では加法性が満たさない2つのケーキの公平分割を理論的に考察し、Pareto最適性を改善した分割法の存在性が証明されている。本研究ではそれを実現させるための手順を開発し、水資源の公平割当への適用可能性について検討を行った。現在、いくつかのアイデアについて理論面・実際面での比較・検証を行っている。
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