研究概要 |
作業負担評価に必要な操作力データを集めた操作力データベースの構築を目指し、操作力データの実測を行った。平成23年度は物や機器の押し引き作業として、様々な場面で頻見される手すりを対象に、手すり操作力の実測を行った。 日常生活場面に多い座面400mmの椅子と産業場面に見られる座面200mmの作業用チェアを想定した条件で、それぞれ手すり位置が変化した際の操作力を実測した。手すり位置は椅子の前面からの距離を150mm、250mm、350mmとした。そして力覚センサや床反力計、筋電図などの装置を組み合わせた実験系を構築し、操作力が身体負担に及ぼす影響を考察した。その結果、座面の低い椅子では操作力が大きくなり、特に鉛直方向に引く力が大きくなることがわかった。座面が低くなっても鉛直方向の床反力は変化しなかったことから、手すり操作力の増減によって鉛直方向への移動を補助する傾向が確認された。このことから、起立動作時の身体負荷推定時に正確な手すり操作力データを用いることの重要性が示唆された。さらに手すり位置の影響として、手すりが椅子に近いと鉛直方向への操作力が大きくなり、手すりが椅子から遠いと前後方向への力が大きくなることがわかった。操作力の変動は最大で30N程度、筋電図の結果から上肢の筋負担は10%MVC程度増加することがわかった。この結果から、身体負荷演算において手すり位置に応じた適切な操作力ベクトルを与えることで、身体負荷推定精度の向上が見込まれる。 今年度のデータ実測によって、実際の作業とシミュレーションの誤差を解消するデータを計測することができた。また今回のデータの活用の検討を元に,データベース検索システムの準備をさらに進めた。具体的には,データの検索機能と加工機能を作り込み,デジタルヒューマンへのリンク方法について検討を進めた。
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