最近、トヨタ生産方式が特に注目を浴び、一部上場の大手を始め導入する企業がたいへん多くなっている。トヨタ生産方式の導入で最も大切なことは、ロット生産ラインの生産ロットを徹底的に小さくすることである。生産ロットが小さいと、発注点方式で仕掛けができ、信号かんばんにより適切な仕掛けタイミングを容易に決定することができる。しかし、新たな問題が発生している。発注点にならないと生産すべき部品が分からないので、明日以降の段取り替え作業の計画ができないことである。この問題を解決するためにトヨタ自動車では、予め決めた仕掛け計画に従って生産する「定時不定量生産方式」という方法も採用しているが、ほとんど知られていない。この定時不定量生産方式を調査してみると、いろいろな課題がある。そこで、トヨタ自動車で使用されているこの方式を抜本的に見直し、少ない在庫で運営ができ、理論的に優れた方法を開発することやその稼動特性を明らかにしてこの方式の普及を図ることが目標である。 今年度は昨年開発したスケジューリングの方法より、安全在庫を少なくできる方法を開発した。数値実験で評価すると安全在庫が半分以下になることがわかった。このスケジューリングの方法を活用し、実務で容易に適用できるロット生産ラインの運営方法を確立した。この運営方法でロット生産ラインを稼動させると、どのような稼動特性があるかを数値実験で明らかにした。また、一般的なロット生産ラインの運営方法である計画方式と比較し、この方式が遥かに優れていることが明らかになり、定時不定量生産方式によるロット生産ラインの運営方法の普及が望まれることがわかた。
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