本研究の目的は、混雑状況と個々人の混雑予測の関連の解明を目的としている。混雑課金に現実的な制約がある場合には、最適課金方式の経済的意味に関して不明な点があるので、本年は、静的な混雑均衡と課金制御の問題の解明に集中した。 混雑制御とは、道路などの施設を使用することによって利用者が得る便益の総計と、その結果起きる混雑による社会的費用の差をいかに最大化するかという問題である。この問題の解決法として外部性価格設定が知られている。つまり、「迷惑をかけた人は、その迷惑に相当する金額を支払う」という単純な原則を適用すると、個々人が全体最適化と整合するように動機付けされ、理論的には静的な混雑問題の解決ができる。だが、この方法を実装するためには、高速道路だけでなく一般道路を含むすべての道路で課金をしなければならず、現実の解決方法としては無理がある。部分的にしか課金できない道路網における最適課金制度は、セカンドベスト価格設定の問題となるが、その課金方式の経済的意味については解明されていない。 提案者は、セカンドベスト混雑課金の解を簡潔な形で導出し、それがある種の「迷惑税」となっていることを示した。特に、文献で頻繁に扱われてきた2経路問題と呼ばれる問題の最適課金に対して、グラフによる解りやすい解釈を与えた。さらに、利用者の時間に対する機会費用が一様でない場合についても検討し、この利用者の個人情報が混雑課金制度に与える影響を理論的に解明した。
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