研究概要 |
製品やWebサイト、システムなどの利用品質(ユーザビリティ)のうちの効率性とは、ユーザが指定された目標を達成する際の正確さと完全さに費やされた資源と定義されており、ユーザがタスクを実施する際に必要とされた身体的、精神的に要する努力,時間,物質的あるいは経済的コストの程度を意味している。このうち身体的、精神的に要する努力の程度に相当する効率性はワークロードと捉えることができる。そこで本研究は、この効率性を直接的にかつ定量的に評価できる指標として、ワークロード評価指標を取り上げ、ユーザビリティテストを用いた検討を通じて、ユーザビリティテストの際のこの効率性の評価指標となり得る客観的・定量的な指標を提案することを目的とした。本年度は昨年度ユーザビリティの効率性の評価指標としての有効性が示された時間評価の概念を応用した客観的ワークロード指標である統制呼吸の予測的呼吸率を取り上げ、昨年度と同様にユーザビリティの高低が既に明らかな地方自治体の2Webサイトを用いたユーザビリティテストを通じて、予測的呼吸率のユーザビリティの効率性の評価指標としての可能性を検討した。 ユーザビリティテストは16名の大学生に、各人の自発呼吸の平均ペースで提示される音に合わせた呼吸統制を課しながら、予めユーザビリティの高低が明らかな2Webサイトを用いた2種の異なるタスクを実施させ、その際の予測的呼吸率を求めた。その結果、既存のユーザビリティの効率性の評価指標として用いられるタスク達成時間、及びNASA-TLXのAWWL値には、ユーザビリティの高、低サイトの間にタスクの種類によらず有意な差が認められた。さらに高低サイト間にタスクの種類によらず予測的呼吸率にも有意な差が認められた。 このことから予測的呼吸率が効率性の面から客観的,定量的ユーザビリティ評価指標となり得ることが示唆された。
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