研究の意義:従来、日本のものづくりを引っ張ってきたのは工業技術である。そのことは日本の高度経済成長に貢献してきたが、逆にその成功がこれからの成長にとって足かせとなる恐れがある。具体的には次の3つが喫緊の解決すべき課題である:1.ハードに比較してソフトと標準化が弱い、2.要素技術に比較してシステム技術が弱い、3.経験と勘に対してマネジメント理論が弱い。以上の課題を解決する制度設計についての提案である。 研究課題の重要性:第1の課題は、優秀な現場技術者の高等品質追求指向を経営者が抑えきれなかったマネジメント組織の欠陥である。すなわち、経営的要請から必要な技術を選択するという視点の確立である。第2の課題は、第1との関わりもあって、高品質製品を得意とする日本企業は、グローバルに普及する低価格製品には弱いガラパゴス状況となっている点であり、ローカル視点とグローバル視点の複眼的経営の確立である。第3の課題は、企業と社会におけるビジネススクール役割が低すぎる点である。そのことは初等・中等教育の全般においてマネジメントに関する体系的な積み上げ教育を行うことによる真の知の融合の必要性を意味する。 具体的内容:ものづくり企業のタイプには、インテルやシマノのようにあらゆるメーカーの製品に使用される部品を製造する要素技術とハード技術に強い企業がある一方、キーエンス、アップル、任天堂のように要素技術とハード技術の比重の高い製造をアウトソーシングして高度なサービス実現しようとするシステム技術とソフト技術に強い企業がある。ものづくりはその両方を戦略的な観点から設計する仕組みを提案したものである。
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