研究概要 |
ひずみゲージや温度センサーなどを橋梁やトンネル,電力設備などのインフラストラクチャに配置し,これらの状態を基地局に集約して安全監視を行うことにより,事故災害の予防に役立てることができる.このとき各センサーと情報端末(リーダ(reader))間で無線通信を行えば,広域多点のワイヤレス計測が可能となり,安全性監視の有効性が飛躍的に向上する.本研究ではこのようなワイヤレスセンサーによるインフラの状態監視・安全診断の実現を目指し,このセンシングを担うセンサーとして,リーダから放射された電磁波エネルギーで動作する無電源ワイヤレスセンサー(PWセンサー(passive wireless sensor))を提案し,その基本性能と有効性を検証するための基礎研究を実施する. 平成21年度においては,まずPWセンサーのためのアンテナ設計を行うために,モーメント法に基づく電磁界解析と遺伝的アルゴリズムを用いた,アンテナ形状最適化手法を開発し,最適化されたアンテナ形状を求めた.さらに最適化結果に基づいて実際にアンテナを試作し,ネットワークアナライザにより入力インピーダンスを測定し,測定結果が解析結果と一致することを示した.つぎにPWセンサーを土壌中やコンクリート,金属の表面に設置した場合に,PWセンサーが受信可能な電力の変化を,FDTD法に基づく電磁界解析により明らかにした.さらに,誘電体層をPWセンサーのアンテナ近傍に配置することにより,受信可能電力を増加できることを明らかにした.また,PWセンサーの回路部に使用される電圧倍増回路(Cockcroft-Walton回路)の非線形性を考慮して,電磁波との結合問題を解析するためのFDTD解析コードを作成し,これを用いて通信距離の評価を行った.
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