今年度は、運転集中度の評価に不可欠な下記の要素技術の開発を行なった。 研究課題1;車両前方画像処理 ドライバが高速道路上で通常運転時に注視する、車両、道路標識、高輝度物体、道路出現点を対象として、画像からこれらの物体を抽出する処理手法を開発した。注視対象候補は、ある瞬間の前方画像中に複数個存在しており、ドライバの注視行動の妥当性を評価する上で、これらの注視候補に対して注視可能性の優先順位付けが必要となる。そこで、他車両と自車との相対速度、道路標識上の文字の大きさ、高輝度物体の出現に反応する人間の視覚特性等を考慮したプロトタイプの候補物体の注視順位付けモデルを構築した。 研究課題2;ドライバ視線計測 半径600mmの円弧上をカメラが自由に移動するカメラ回転装置を設計・製作し、左右方向の正確な頭部回転運動を相対的に実現した。この装置を用いた実験により、頭部回転角度データを基にした視線方向の補正手法が有効であることを確認した。また次年度に向けて、単一カメラ画像を用いた顔回転角度の推定手法について開発を進めた。光環境の変動に対しては、従来、ソフトウエアで対応していたが、実車環境では限界があるため、近赤外光照明装置による網膜への悪影響が少ない最適な照明方法について検討を始めた。 研究課題3;運転集中度評価 構築した運転集中度の予測アルゴリズムを用いて、車両前方画像とドライバ視線情報を統合して、運転負荷状況下での視線移動の時系列変化を解析した。現状は、手作業を含めたオフライン処理の段階ではあるが、実画像を用いて、運転負荷の有無により注視行動パターンに生じる変化を検出できる可能性を示した。 以上、今年度の研究目標をほぼ達成するとともに、次年度へ向けての要素基盤を得た。これらの成果の一部は、国際会議および名古屋モーターショー会場内大学等教育研究機関コーナーにおいて発表した。
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