研究概要 |
環境リスクや食品安全性に関するパブリック・リスクコミュニケーションの成果をいかに評価すべきか、その評価手法の開発を課題として研究を進めてきた。平成21年度は、住居環境における迷惑施設建設問題を取り上げ、利害関係者間に不信感が醸成さた場合の社会的コストについて検討した。平成22年度は、遺伝子組換え農産物をめぐる社会的対立を取り上げ、リスクコミュニケーションの果たす役割について考察した。平成23年度は、福島原子力発電所事故に伴う野菜の「風評」被害問題を取り上げた。 第一の課題として、卸売市場の取引データを使った「風評」被害額の推計を行った。「風評」被害額の定義を行った後、野菜の「風評」被害額の推計式を設定した。それに基づいて、H23年3月~H24年2月までの1年間に、東京市場だけで170億8,500万円の「風評」被害が発生したという推計結果が得られた。 第二の課題として、一般消費者が、食品の放射性物質汚染についてどのようなリスク認知をしており、どのようなリスク回避行動や情報収集活動を行っているか、その実態を調査した。首都圏と関西の一般家庭約7,000世帯にアンケート調査票を郵送し、約1,000世帯から回答を得た。その結果、「風評」被害にも、情報を吟味した上での買い控えとそうでない買い控えの2種類があり、獲得した情報量は異なるが、それは調べてみて利用可能な情報のわかりやすさや信懸性の限界に突き当たるか、それを見込んで調べないかの違いであって、いずれも同様の不安を抱え、相応のコスト負担を強いられているていることに違いがないことがわかった。
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