研究課題/領域番号 |
21510179
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
村上 ひとみ 山口大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (10201807)
|
研究分担者 |
瀧本 浩一 山口大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (50263794)
榊原 弘之 山口大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (90304493)
|
キーワード | 避難行動 / 東日本大震災 / 津波避難 / 自転車 / 避難生活 / アンケート調査 / 名取市 |
研究概要 |
2011年3月に発生した東北大震災後、ガソリン等の燃料不足が広域に及ぶ被災地では、被災者も自治体や企業も自転車に頼って移動や運搬をまかなう事態となった。また、避難所となる学校校庭や公共施設の駐車場が車であふれれば救援活動に多大な支障を来すが、モーダルシフトを推進する地域コミュニティであれば、車への依存が軽減される。本研究では、日常から自転車の利用を勧めるモーダルシフトが、自治体、コミュニティの地震備え、緊急対応等に対してもたらす効用を調査分析し、その推進策を提案することを目的とする。 (1)平成22年度の住民を対象とした地理知識の調査では、日常的な交通手段選択や、地域活動への参加状況等が地理知識の多寡に影響を与えることが明らかとなった。今年度は、大学生を対象とし、生活習慣を交通行動に限定して詳細な調査を行った。その結果、以下のことが明らかとなった。 ・地方大学の大学生においては、自動車の利用比率が高いほど地域の地理に精通しており、自転車の利用比率が高いほど地理知識が少ない。 ・地域に対する愛着度と地理知識の豊富さの間には正の相関が認められる。 (2)東日本大震災の大津波による死者が900名を超えた宮城県名取市において、避難行動に関するヒアリング調査及びアンケート調査を実施し、津波避難における情報取得、避難の時期と交通手段、車の渋滞と身の危険等についてその経緯を明らかにした。砂浜海岸に位置する名取市では津波被災の経験が少なく、津波に対する警報伝達も遅れ、避難開始が遅れた。地形が低平で高台の遠い名取市閖上地区等では、RC造3~2階建ての中学校・小学校・公民館等への避難が多かった。車の利用が6割以上を占め、早期にはラジオから情報を得て内陸へ迅速に避難したケースがある一方、渋滞が発生し、津波に流される等身の危険も生じた。自転車の利用は2~4%と少ないが、早く避難を開始して安全に避難できたケースがみられた。自転車は橋梁被害や液状化による亀裂、段差、道路閉塞に強く、避難時の活用ポテンシャルが示唆された。
|