当該年度では前年度に確立した強震記録から傾斜運動を逆推定する方法を2004年新潟県中越地震、2008年岩手宮城内陸地震、及び、2011年東北地方太平洋沖地震の記録に適用し、真の並進運動を求めた。これにより、地震中に発生する静的変位(コサイスミックな永久変位)や表層地盤の非線形応答に関する考察を進めた。 特に、東北地方太平洋沖地震では震源依存の傾斜運動を定量的に評価し静的変位の発生と太平沿岸域での伝播を考察とした。即ち、強震動の継続中に宮城県沿岸部から静的変位が発生し、関東及び岩手県側に伝播した静的変位はほぼ東へ水平変位するとともに地盤が宮城県域で50から100cm程度沈下したことを強震記録のみから読み取ることを可能とした。これらは、地震後のGPS測量と調和的な結果である。この様な情報を現地での地震観測のみから導けることは、津波警報の質の改善に貢献すると思われる。 局地的な傾斜運動を除去した後の並進運動は、表層地盤の非線形応答に関する考察を広い帯域で行うことを可能とする.岩手・宮城内陸地震における一関西観測点の非対称上下動は4g近い最大加速度を記録している。今回の考察では、バウンシング・ボールと類似の全波整流型の変位運動が発生し、少なくとも2回以上の連続した大きなバウンシングが極めて高い加速度を発生することが判った。これは、観測とシミュレーションの両面から確認出来た。
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