研究概要 |
詳細な隆起活動史と火山編年(段丘編年)を把握するために、夏(2009年7月31日~8月4日)と冬(2010年1月22~26日)の2回に渡って現地野外調査を実施した。現地調査では、海岸段丘の地形学的調査や火山地質調査(露頭調査)とともに、サンゴ化石と火山砕屑物、炭化木材等の試料を採取した。採取した試料については、^<14>C年代測定や全岩分析、火山ガラスや斑晶鉱物の主成分分析を実施し、硫黄島でこれまで考えられていた3つの火山活動期に整合的な結果が得られ、それぞれの火山活動期に隆起活動があったことも確かめられた。また、北ノ鼻周辺の海岸段丘露頭(元山層下部)で、従来確認されていなかった長径30cm以上の炭化木材が複数確認された。さらに、硫黄島の段丘面上あるいは堆積物中で複数確認された外来と思われる漂着軽石と、海上保安庁から借用した硫黄島南方の海底火山(福徳岡の場)の軽石試料についても成分分析した結果、硫黄島の漂着軽石は福徳岡の場1986年噴火の軽石とは対比されないことがわかり、むしろ硫黄島起源の軽石に成分が近いことが判明した。その他、硫黄島の面的な隆起量を把握するために、詳細な現在の地形情報(DEM)から1m間隔の等高線図を作成した。地殻変動観測では,島内に3点設置されている既設のGPS観測点による時系列情報と,夏季および冬季の現地調査時におけるGPSキャンペーン観測および地球観測技術衛星「だいち」の合成開口レーダー(PALSAR)データの干渉解析により,水平変動および上下変動の様相を把握した.この観測結果によると2009年から10年にかけては,過去約3年間続いていた30cm/年前後の急速な隆起のフェーズが一段落していること,元山を中心とした山体の収縮傾向が継続しているなどが確認された.
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