研究概要 |
火山活動史の推定と近年の地殻変動との関連を把握するため,地形学的調査,火山地質調査(露頭調査),試料採取およびGPS地殻変動観測と,昨年度採取した試料の各種分析(堆積物の化石含有調査,古地磁気測定)を実施した.昨年度採取した釜岩堆積物と摺鉢山山頂南西部の湖沼性堆積物について,含有化石を調査した結果,前者では有機質微化石としてイネ科の花粉が極わずかに確認されたが,石灰質・珪質微化石は全く認められず,年代測定が行えるような化石は得られなかった.後者には,有機質微化石としてイネ科の花粉が比較的多く認められ,その他マツ属,スギ属,アカガシ亜属,カヤツリグサ科などの花粉も認められたが,石灰質・珪質微化石は全く認められなかった.以上の結果から,釜岩堆積物については,年代推定は困難で,摺鉢山山頂の湖沼堆積物については,年代推定は困難なものの,貝形虫,有孔虫,放散虫,珪藻などが全く検出されない点から,通常の湖成・海成堆積物ではないと推定された. 摺鉢山西岸ベースサージ(4試料),海岸温泉及び平成観音付近の元山層(5試料)について,堆積物の古地磁気測定(NRM)を実施した結果,摺鉢山西岸ベースサージは,偏角・伏角ともにばらつきが大きいものの,一部の試料の堆積年代は約650年前を示し,従来の摺鉢山噴火時期と近い年代となった.元山層については,比較的磁化方位がまとまっていたが,^<14>C年代測定により推定される年代と大きな開きがあり,NRMによる年代推定は困難で,今後交流消磁による二次磁化の除去を行う必要がある. 地殻変動については,隆起傾向は2012年3月時点でも継続していることがGPS連続観測で確認されており,繰り返し観測の結果からは,硫黄ヶ丘を中心とする収縮変動と,阿蘇台断層を中心とする膨張傾向の変動といったパターンが同じままで,変動量だけが大きくなったという特徴が見られた.このことからも,同じ変動源による変動が継続していると考えられる.
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