研究概要 |
AM放送波(搬送波)の水平・鉛直磁場成分を同時に受信し、両者の位相差から地下電気伝導度分布の異常域を推定する装置を開発・製作した。装置は、小型・低コスト、取り扱いが容易であるような方式をめざしたが、高周波ノイズを避けるため、水平、鉛直磁場コイルからなるセンサー部と、位相検出・表示部を別装置とせざるを得なかった。本装置が用いる放送波の周波数は400~1000kHZ程度であるので、対象となる地下深度は約5m程度より浅いことが予想され、斜面等の地下水分布の検出には最適である。なお、室内での性能試験では、700kHzの電波に対して、金属板上で位相差が増大することが確認でき、装置は正常に動作するにとを確かめた。プロトモデルを用いた観測が,薩摩川内市の川内川「シラス堤防」湛水試験場で実施されている。これは、垂水にあるNHK鹿児島放送局のAMラジオ電波(576kHz)を用いたものであるが、結果は,測定時,湿潤状態であった湛水池跡が,他より8~10度大きな位相差を示した.この位相値を説明するために,今回、誘電率も考慮した2次元有限要素モデル計算を実施した。その結果,この位相差の増大は、比抵抗が100Ω・m大地中の深度1.5mにある約10Ω・mの低比抵抗層で説明できることが明らかになった.これにより、本装置は当初の目的どおり、斜面崩壊の一因となる地下水異常分布の検出法として有効であることが確認できた。
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