昨年度制作・改良したAM放送波(搬送波)の水平・鉛直磁場成分を同時に受信し、両者の位相差から地下電気伝導度分布の異常域を推定する装置を用いて、六角川支流の牛津川堤防の測定を実施した。この測定の目的は、大きな干満の差を有する有明海に注ぐ六角川では、長い感潮域を持っており、1、満潮時には河川の電気伝導度が高いこと、2、特に牛津川では堤防下端部の一部に河川水が浸透している箇所があるため、予想される堤防下で高電気伝導度域の存在を検出することにある。測定は、堤防上部の道路沿いに50m間隔で18点を、堤防を横断する1測線(約10m間隔、5点)で実施した。測定では佐賀NHK第1放送(周波数963kHz)を受信した。後者の測線では、河川に近づくにつれ位相差は増大し、1に述べた電気伝導度の異常域(河川水)を本方法で検出できることが明らかになった。道路沿いの測線では、2カ所で位相差の増大が認められた。そのうちの1カ所で電気探査を実施したところ、堤防下部に高電気伝導度層の存在が明らかになった。用いた周波数ではスキンデプスが短いため、この下端の高電気伝導度層(深度約5m)までは到達できないが、この層上の地表からの深度0.5mに高電気伝導度層(厚さ0.6mm)を仮定すると、観測された大きな位相差が説明できることが、モデル計算から明らかになった。この結果は、位相がMT同様深部構造に左右されることで理解できるが、より直接的には、例えば堤防下端部に沿った測定を実施することにより、おそらく河川からの浸透を示す堤防下部の高電気伝導層の存在が検出できると思われる。
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