放送波(搬送波)の水平・鉛直磁場成分を同時に受信し、両者の位相差から地下電気伝導度分布の異常域を推定する装置を開発した。装置は、例えば水質調査用電気伝導度計のような、小型・低コスト、取り扱いが容易であるような方式をめざしたが、ほぼこれを満足するものとなった。利用する放送波の周波数は400~1000kHZ程度であるので、対象となる深度は約5m程度より浅い、ごく浅部の電気伝導度異常の検出に有効である。このような仕様であるため、例えば自治体の職員が本装置を用いた測定により、斜面等の地下水分布異常の検出から、大雨時の斜面崩壊による土砂災害事故の可能性のある場所を特定し、避難等の情報に利用できるものと考えられる。 昨年度、試作装置を用いて六角川の支流である牛津川堤防で測定を実施した。目的の一つである、海水遡上による塩分を含んだ低比抵抗河川に近づくに従っての位相め変化が観測された。しかし、電気探査から漏水が堤防底付近で生じており、これは本装置の探査深度より深くに位置する。これらの結果から、漏水の検出には、堤防のスロープ最下端に沿っての観測が必要であることが分かる。このことを確認するために、昨年と同じ堤防(場所)での堤防斜面を利用して、最下端から測定点までの距離の違いによる位相変化量の差異を検出する観測を行った。また、VLF-MT測定も併せて実施した。その結果、昨年度の結果を支持する結果が得られた。また、より深部の情報を持つVLF-MT測定結果も、これを支持するものであった。
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