本研究の目的は、高波や津波による災害軽減のために、起こりうる被害を効率的に予測し、実用的な避難計画やハザードマップの作成に資することであり、本年度の研究成果は以下の通りである。 1. 海岸堤防・護岸の高波・高潮または津波による破堤限界の予測: (1) 高波・高潮による堤防・護岸の主たる破壊機構は侵食・洗掘に続く堤体内からの吸出しによる。まずは、日本とタイ国で33箇所の現地事例を調査し、来襲波高に対する被災しないための前面砂浜の限界高さと断面積を求めた。そして、遡上域も含めた洗掘予測のための平面二次元数値モデルを開発し活用して堤防・護岸前面の洗掘算定図を作成した。さらに、吸出し実験を大幅に追加実施して、粒径の違いを考慮した吸出し発生の判別式の精度向上を図ると共に、上記の現地事例に適用できることを確認した。これらの一部をISOPE2011年国際会議で発表予定であり、土木学会ジャーナルへ投稿中でもある。 (2) 津波に対しては、戻流れによる洗掘が盲点になるため、中規模の各種洗掘実験を追加実施し、粒径・護岸高低差、前面水深を考慮した洗掘量算定式群を改良し、新たに製作した大規模実験装置による実験データ、および、現地実測データとの相関が良好であることを確認した。そして、その一部を広域洗掘の平面二次元数値予測モデルの検討結果と共に、ISOPE2010国際会議で発表した。さらに、土木学会ジャーナルへ投稿準備中である。 2. 陸側建物等の津波による破壊限界の予測: 各浸水深に対するRC建物、木造建物、および、コンクリートブロック壁の代表部材の破壊限界寸法を求められる算定図を、過去の被災データを用いて改良した。そして、平面二次元数値モデルで再現した浸水被災事例に適用し、十分な家屋破壊予測精度のあることを確認した。この成果はJETと土木学会ジャーナルへ投稿中である。
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