研究概要 |
本研究では,高密度の微動測定を用いた表層地盤不整形性のモデル化,ならびに地震観測記録を用いた地盤のひずみ依存性のモデル化により,山際を含む市街地各地点での地表地震動ならびに地震被害率を推定する方法の開発を目的としている.2007年度能登半島地震を対象として,2009年度までに石川県穴水町の170点余りで微動測定を行い,被害集中域直下の詳細な不整形地盤構造の把握を行った.また,観測記録を用いて地盤の動的変形特性および入射波を評価し,本震地表地震動を2次元有限要素法で推定した結果を2010年度前半の国際会議において2編発表し,関連する研究者との意見交換を行った. 小規模の盆地構造では実体波と表面波の干渉により地表地震動の増大が生じることを説明することができたが,2次元不整形性による地震動の増大は10%程度にとどまっており,実際の地震被害の集中を十分に説明できていない.そこで盆地の3次元性の影響を検討すべく防災科学技術研究所の3次元差分解析プログラムGMSを用いることとした.同プログラムは震源を含む大規模構造の地震動伝播シミュレーションを対象とし,地表付近の小構造に対する平面波入射解析をそのままでは扱うことができないため,2010年度後半においてGMSにより平面波入射を模擬する複数震源配置法の検討を行った.全無限体の理論解を用いてVertical dipslip型点震源の複数配置による地表応答を検討したところ,600m四方程度の平面においてFar field項が卓越し,ほぼ一様な水平動分布が得られる条件に対して,Vs100m/sの地盤の深度200mに121個の震源を一様分布させることが有効であることがわかった.今後,3次元差分解析での上述の震源分布の有効性を確認し,既往被害分布のより合理的な説明と,小さな盆地構造を有する地域での地震被害集中による地震被害率推定を実施する.
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