研究概要 |
近年のマグニチュード7クラスの被害地震で見られた被害集中について,本研究では高密度の微動測定を用いて表層地盤の不整形性を,地震観測記録を用いて地盤のひずみ依存性をモデル化し,市街地各地点での地表地震動を推定する方法の開発を行ってきた.2011年3月12日に発生したマグニチュード6.7の長野県北部の地震により震源直上の長野県栄村では甚大な被害が生じ,2011年度の検討対象である地震像に対応するものとして長野県北部の地震を選定し,多くの地震被害の見られた長野県栄村森地区,青倉地区,横倉地区において高密度に測定点を配した微動測定を実施した. 2011年8月から9月にかけて森地区72点,青倉地区68点,横倉地区40点の移動測定を各10分間行い,森地区の栄中学校および横倉地区の栄小学校において中央および円周上3点計4点のアレー測定を,アレー半径3m,5m,10m,20mに対して各15分間実施した.これらの地区は数m~30m程度の表土および崩壊堆積土の下に洪積地盤が安定的に出現する土石流等による崩壊地盤であり,本研究で行ってきた基盤上の表層1層のモデル化が有効であった.栄村役場の観測記録を用いて地盤の動的変形特性および入射波を評価し,本震地表地震動を2次元有限要素法で推定し,震源直上においても震央からやや離れた小規模の盆地構造同様に,山際を含む地上および地中の微地形により発生する表面波によって,地表地震動が増大し被害の特徴的な分布に対応することが最大の被害を生じた青倉地区に対して説明された.平面波入射模擬の囲難のため当初計画した3次元の検討には至らなかったが,簡便な2次元解析による地震動の増大の可能性に従って,少額の予算で地震災害に対して脆弱な地域をあらかじめ特定し,大地震発生時の迅速な救援活動に役立てることができるものと考えられる.
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