本研究においては、災害における経済的影響評価の方法を標準化するための枠組みの構築を目指している。特に開発途上国では災害からの被害が甚大であることだけでなく、開発の妨げになり長期的な開発の低迷につながるとも考えられており、現在では世界銀行と国連が協同で開発途上国における災害被害低減に向けた活動を行っている。と同時に、災害被害に係わる調査や統計データの収集に関しては各国によって差がありかつ場当たり的であり、国際機関(世界銀行や国連等)からの開発支援においてその政策指導に災害に対する施策を勘案することが重要であると認識されるに至っている。このため、災害の経済的影響評価の方法を現在まである程度確立しているデータの収集や開発指標と関連づけて構築することで、開発途上国だけでなく先進国においても災害対策立案や災害後の援助・支援計画に役立つと考えられる。 本年度は、最終年度と言うこともあり前年度までに洗い出された問題点に鑑み、災害の経済影響の実測とそれに伴う産業構造変化の分析を中心に行いつつ、研究成果の総括を行った。この実測は提案する枠組みの妥当性を吟味するためにも必要なことであり、かつ現在までこのようの実測はほとんど行われてきておらず、大変貴重な実証研究と考えられる。この実測のケーススタディとして阪神・淡路大震災を取り上げた。 研究総括と言うことでは、幅広い学会(災害関係、経済関係、手法関係等)で研究成果を発表しその内容を吟味するするとともに、論文執筆への貴重な意見を得た。特に本研究の集大成として2012年3月下旬にブラジル・サンパウロ大学主催の災害経済影響国際ワークショップにて基調講演に招待されたことは、現在までの研究成果や内容が国際的にも評価されているという証と考えることができる。
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