研究課題/領域番号 |
21510200
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研究機関 | 岐阜工業高等専門学校 |
研究代表者 |
熊崎 裕教 岐阜工業高等専門学校, 電気情報工学科, 教授 (70270262)
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キーワード | ファイバグレーティング(FBG) / 斜面崩壊 / 曲げおよびひずみ / 屈折率 / 反応性イオンエッチング(RIE) / 非対称断面 |
研究概要 |
土壌中で使用可能な斜面崩壊防止センサをめざして、非対称断面形状のFBG(Fiber Bragg Grating、反射中心波長1550nm、加工領域10~20mm)をもつグレーティングファイバの反射スペクトルを用い、周囲媒体の屈折率および曲げ応力の測定を試みた。 グレーティングファイバの先端部を屈折率の異なる液体(n=1.33~1.46)に浸漬した場合、反射中心波長とそれ以外の波長における反射光量の差により5×10^<-4>程度の精度で屈折率を認識できる。今回は、土壌中の水分量をどの程度の精度で検出できるか、実験を行った。グレーティングファイバの先端部を土に埋め、土の上部から一定量の水を供給しながら、反射スペクトルを測定した。反射中心波長とそれ以外の波長における反射光量の差から、土壌中の正確な水分量を測定することはできなかった。センサ領域がシングルモード光ファイバのコア部分であり、検出可能な範囲が局部的であることが起因したと考えられる。ファイバカプラを用いてセンサ領域を複数点に分岐して測定することは可能であることがわかった。 一方、曲げ応力に対しては、直列に配置した反射中心波長の異なる二つのFBG(FBG-AとFBG-B)各々に、直交する方向から異方性エッチングを施し、加工面がπ/2異なる非対称断面形状に加工した。曲げ方向を変えながら二つのFBGを含む領域に一様な曲げ(曲率7.9m^<-1>)を与えた。曲げ方向に対する二つの反射中心波長の変化量は、位相がπ/2異なる正弦波となり、反射中心波長の変化量の比から数度程度の精度で曲げ方向が認識できることがわかった。反射中心波長は曲率に対して直線的に変化することがわかっているので、二つの波長変化量とその比から曲げ方向および曲げの大きさが検出できるといえる。また、非対称断面形状に加工したFBG単独では土壌中で折損し、実用に耐え難い問題点も判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
非対称断面形状に加工したFBGの反射中心波長の変化量とその比から曲げ方向および曲げの大きさが同時に検出可能という非常に興味ある結果が得られ、申請時の概念が通用することは示せた。しかしながら、センサの機械的強度に問題があることが判明したため、解決することが必須である。また、グレーティングファイバの先端部単独では土壌中の水分量を正確に測定できない課題が残った。
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今後の研究の推進方策 |
微細加工したグレーティングファイバを斜面崩壊防止用のハイブリッドセンサ(曲げ応力および土壌中の水分量測定用)として機能させるには、土壌中での総合的な動作検証が必要となる。しかし、微細加工ファイバの機械的強度を改良することが不可欠であることが判明し、微細加工ファイバの強度試験と改良を繰り返し実施する必要性が生じた。また、小型化の観点から、シングルモードファイバ上のFBG部を異なる反射特性をもつ二つの領域に分割するのが好ましく、その方法についても検討すべきである。一方、土壌中の水分量(含水率)の測定は、水分量に対する反射中心波長とそれ以外の波長における反射率の差から求めることになる。局部的であったセンシング部分(シングルモードファイバ先端のコア部分)を拡大、あるいは複数点化することが測定精度を向上させる重要なポイントと考えられる。以上のように、課題が明確になったため、そこに焦点を絞り、新規の研究テーマとして取り組むことによって、実用が可能な光ファイバハイブリッドセンサとしての完成をめざす予定である。
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