研究課題
種々の遺伝子の発現にエピジェネティックな作用が関与していることが明らかになってきた。特に癌の発生や進展にDNAのメチル化やヒストンの脱アセチル化などのエピジェネティックな異常が関与していると考えられている。しかしながらDNAのメチル化、ヒストン修飾などのエピジェネティックな作用が、転写開始点およびその発現量にどのような影響をおよぼすか検討した報告は非常に少なくその詳細は明らかでない。そこで大規模並列処理配列決定法による次世代シークエンサーを利用しゲノムワイドなメチル化測定法を確立すると共にすでに開発が終了している5'-end測定法を用いてエピジェネティックな作用が発現様式にどのような影響与えるかを検討した。TSA処理した大腸癌細胞株HT29による遺伝子発現変化でDNAメチル化関連遺伝子が変化していたことからDNAメチル化が多様な遺伝子変化をもたらしている可能性が示唆された。このことから次にこの細胞のゲノムワイドなDNAメチル化を検討した。DNAメチル化を測定するためにDNAメチル化感受性制限酵素(BssHII,SacII,EagI)でTSA処理細胞のゲノムDNAを切断後、次世代シークエンサーに対するリンカーを付加し測定した。Tagに存在する制限酵素部位のシトシンは非メチル化であると仮定されるため、サンプル間のTag数の差を調べることで、メチル化状態を検索できると考えられる。この方法の精度を確かめるため、観察されたtag数とBisulfite法とを比較したところ両者の方法に相関が認められ、この方法が有用であることが確認された。この方法を用いて測定した結果、TSAによるDNAメチル化の変化は観察されなかった。このことからヒストンの脱アセチル化剤、TSAによる遺伝子発現変動の変化がDNAメチル化の変化によらないことが示唆された。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Genome Research
ページ: doi:10.1101/gr.110254.110
Genomics
巻: 95 ページ: 217-223