真核生物遺伝子を分断化するイントロン配列は、核内のRNAスプライシングによって除去される。スプライシング初期過程において、U1snRNPは5'スプライス部位の認識に不可欠である。これに対し、本研究では、(1)U1snRNPに依存しない新規スプライシング反応の分子メカニズムを明らかにする、(2)U1非依存的にスプライシングされる遺伝子群を探索し、この機構の一般性を検証するとともに、(3)U1非依存的スプライシングの生理的な役割に光を当て、ゲノム情報発現における意義を解明することを目的とする。 これまでに、ヒトF1γ遺伝子の第9イントロンにはU1snRNPが結合せず、U1snRNPに依存しないスプライシングが行われていること、またこの機構が、Fox蛋白質による選択的スプライシング制御に必要なことを明らかにしてきた。HeLa細胞の核抽出液を用いたin vitro実験系においてアンチセンスオリゴを用いてU1snRNP機能を阻害した実験系において、さまざまな領域を改変したヒトF1γ mRNA前駆体を基質としてU1snRNPに依存しないスプライシング機構に必要な制御配列領域の同定を行った。この制御配列領域に相互作用するRNA結合タンパク質を制御候補因子として同定し、培養細胞においてこの因子のRNAiによるノックダウン実験を行うことにによってU1非依存的なスプライシングへの関与の検証を進めているところである。
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