「イントロンの長さは如何に決定されるのか」という問いに対し、2009年度は次の3方面からアプローチした。 1.各モデル生物における全遺伝子のイントロン情報抽出と解析 モデル生物では最頻値より短いイントロンは急激に少なくなるという分布パタンはスプライセオソームの構成や立体構造を解く手掛かりを与えるとの仮説に基き、ヒトのイントロン長をヒト転写物DBを元に集計したところ、イントロン長65塩基から最頻値の83塩基まで転写物総数および座位あたりの転写物数が急激に増加していた。また、65塩基長より短くとも座位あたり複数の転写物が存在し、しかも近縁種の転写物に相同なギャップが保存されている、イントロン有力候補が認められた。よって、ヒトイントロンには65塩基長以上の長さが必要であるが、それよりも短いイントロンが存在し、特殊な条件あるいは新規機構のもとでスプライシングされると考えられた。 2.スプライシング因子の進化的解析 まずスプライシング因子のオロソログの系統ごとの出現や消失を明らかにするために、反応初期のA複合体タンパク質100種のおよび次のB複合体タンパク質176種について、真核生物各分類群23種のオルソログを独自のアルゴリズムを使うRECOGにより、すべて同定した。次に、極端に短いイントロンのみをもつ生物(極短限定種)がスプライセオソームの物理的な限界をクリヤーするには、スプライシング因子が一様に小型である(仮説1)、あるいはスプライセオソームが単純な構成である(仮説2)に基づき、RECOGおよびDB検索の結果を以下の2極短限定種について検討したところ、ヨツヒメゾウリムシでは仮説1タイプであり、微胞子虫は仮説2タイプであることを示した。 3.スプライシング実験 ヒト培養細胞内在性mRNAでは43塩基長以上のイントロンが検出できた。ミニ遺伝子実験では56塩基長以上について再現できた。
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