「イントロンの長さは如何に決定されるのか」という問いに対し、次の二方面からアプローチした。 1. ヒトのイントロン長分布: 昨年度ヒトのイントロン長分布を調べた際に、従来注目されていなかったほど短い(65塩基長未満)分布域に、イントロン様のゲノムと転写物配列の間にギャップがあることを発見した。2010年度は、これらのうち実際に生体内でイントロンとして機能しているものを厳選することを第一の目的とした。 そこで、これらのイントロン様配列のうち、近縁種で保存されているものを転写物データベースおよびゲノムデータベースをそれぞれ検索し、結果を照合した。その結果、23個が保存されたイントロンであることが分かった。さらに、これら65塩基未満のイントロンをもつ遺伝子は特定の種類の転写因子結合配列をプロモータ領域にもつことが有意に多いことが示された。また、これら65塩基未満のイントロンの配列は、G塩基の組成が他の階級よりも高く、既知のGリッチなスプライシング・エンハンサー配列との関連が示唆された。このエンハンサー配列について、研究協力者が細胞の系でスプライシング実験を行って、スプライシング効率への影響を調べたところ、これら65塩基未満のイントロンがスプライシングされるために重要な配列であることを見出した。 2. スプライシング因子の進化的解析: 後生動物/菌類の系統以外の生物ゲノムにおいて、スプライシング関連因子遺伝子の存在について知見を得ることで、イントロン長分布の進化に迫るため、昨年度RECOGにより同定した23種の真核生物のスプライシング因子オロソログを検討した。その結果、U1 snRNAと U1-70kの相同遺伝子の配列はヨツヒメゾウリムシにおいても、U1 snRNP構成に必要な領域が保存され、後生動物/菌類以外の系統でもU1 snRNPを介するスプライシング機構が保存されていることが示唆された。
|