研究概要 |
線虫のDNAマイクロアレイデータ実験について,線虫の同調精度を高める実験方法を確立し,10分間隔のゲノムワイドな遺伝子発現データの実験を2セット実施した.線虫C.elegansの初期胚発生について,このような短い時間間隔の発現データは見当らず,本研究によって計測された高精度なデータは,より詳細な遺伝子調節ネットワークの推測や,遺伝子間の相互作用関係の理解を探るために重要である. このマイクロアレイデータを用いて,遺伝子調節ネットワークのシミュレーションを行うために,線虫の遺伝子群で細胞分裂に関わると考えられる遺伝子群を文献およびデータベースから抽出した.これらの遺伝子群のデータベースを構築するために,遺伝子と調節関係の両側面から捉えると同時に可視化が可能な基本的なデータ構造を設計した.さらに,この構造は,本研究で用いる遺伝子ネットワークシミュレータのアーキテクチャに適しており,表現とシミュレーションが一体化されたモデルであるため,静的および動的な特徴が同時に表現できる利点を持つ.このモデルを用いて細胞分裂に関わる遺伝子群の既知の調節関係を表現し,遺伝子調節ネットワークのシミュレーション実験を行った.その結果,モデルの有効性を確認すると同時に,遺伝子間のより詳細な調節関係の表現が必要なことが判明したため,表現モデルの拡張を行った.また,遺伝子調節ネットワークの予測に重要であるシミュレーション速度についても確認を行った.
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