研究概要 |
ゲノム中には、遺伝子コード領域以外にも、インシュレーター部位や転写因子結合部位など、発現制御に関わる重要な領域が多数存在する。それらの領域での変異は、遺伝子コード領域における機能性多型と同様に、遺伝的疾患に深く関与していることが考えられる。しかし、ゲノム中で遺伝子発現制御領域に関する知見は限られている。そのため、それらの領域での変異が疾患の原因であるような事例を同定することが困難である。本研究は、遺伝子発現制御に関与すると考えられるDNA配列モチーフを比較ゲノムの手法により網羅的に同定し、そこに見られる多型データとの対応づけから、遺伝子発現に影響を与えると考えられる機能性多型の探索を行なうことを目的としている。それにより、疾患原因のターゲット領域を拡張することが期待できる。 本年度は、進化的距離に従ったゲノム配列の重みづけによる保存配列モチーフの検出のため、すでに公開されているPhastConsプログラムを用い、そのパラメータ設定を詳細に検討した。これにより、様々な進化距離の生物種を含むゲノムアライメントから、近縁種のバイアスを受けることなく、保存部位を同定することが可能になった。また、ゲノムアライメントの解析を、選択的スプライシング制御のためのシス因子検出に応用した。その際、特に遺伝子コード領域以外で、かつ、選択的スブライシングを受けるエクソンの近傍に存在する配列モチーフに着目した。その結果、シス因子のネットワークが多様なスプライス制御を担っていることを見出し、論文としてまとめ、発表した(Suyama et al.Nucleic Acids Res.38:7916-7926, 2010)。
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