研究課題
ゲノム中には、遺伝子コード領域以外にも、インシュレーター部位や転写因子結合部位など、発現制御に関わる重要な領域が多数存在する。それらの領域での変異は、遺伝子コード領域における機能性多型と同様に、遺伝的疾患に深く関与していることが考えられる。しかし、ゲノム中で遺伝子発現制御領域に関する知見は限られている。そのため、それらの領域での変異が疾患の原因であるような事例を同定することが困難である。本研究は、遺伝子発現制御に関与すると考えられるDNA配列モチーフを比較ゲノムの手法により網羅的に同定し、そこに見られる多型データとの対応づけから、遺伝子発現に影響を与えると考えられる機能性多型の探索を行なうことを目的としている。それにより、疾患原因のターゲット領域を拡張することが期待できる。本年度は、昨年度までに開発してきた比較解析方法をもとに、ゲノムアライメントの情報とChIP-seq法による実験データを複合的・網羅的に解析することで、発現制御に関わる非コード因子(シス因子)の同定をさらに進めた。また、種特異的な変異について、これらのシス因子の欠失が進化の上で重要な役割を示していることを支持する結果を得た。同一種内での多型との関連付けについては現在進行中であり、特にヒトにおいて急速に進展しているゲノムのリシーケンシングのデータをもとにしたバイアスの少ない多型情報の取り込みを目指している。さらに、シス因子と多型との対応のみならず、最近蓄積が進んでいるエピジェネティクスに関するデータとも対応をとることで、遺伝子発現制御に関して、より包括的な情報としてまとめることを予定している。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
J.Hum.Genet.
巻: 56 ページ: 572-576
10.1038/jhg.2011.60