平成23年度には以下の研究成果が得られた。 1.グルコース吸収抑制作用成分の単離と構造決定 これまでの探索研究により見いだされた食後血糖値上昇を抑制する食品素材の抽出物について、動物試験や酵素試験による検討を進めることで、その作用機序を推定した。グルコース吸収を抑制する素材として新たに2種類の抽出物を見いだした。これらの活性成分の構造決定には至らなかったものの、抽出物からグルコース吸収抑制作用を示す画分を取り出して、高極性の低分子化合物である事を推定した。 2.グルコース吸収およびトランスポーターに対する作用の検討 昨年度までに明らかとした、モモ葉由来のマルチフロリンAについて、in vitroの試験により糖質トランスポーターにおけるグルコース流入を濃度依存的に阻害することで、マウスにおいて食後血糖値の上昇を抑制している事を示唆するデータを得た。また、構造-活性相関研究のために、この化合物の類縁体を用いて、グルコース吸収の抑制作用を調べ、その化学構造の特定部分が活性の発現に深く関わっている可能性を示した。 本研究においては、様々な天然素材からの探索研究により、マウスの食後血糖値上昇を抑制する素材を見いだし、その数種類ついて活性成分の特定と、糖質トランスポーターへの作用について検討を加えた。これらの成分が多く解明される事で、栄養成分の吸収を化学物質で制御できる可能性が実験的にも示された。これまでの一連の研究によって得られた研究成果の一部をとりまとめて学術誌に発表した。
|