研究概要 |
平成22年度までの研究で、タンパク質中の全カルボキシル基をアミド化した後酵素消化し、消化によってアニオンとして解離しうる遊離のカルボキシル基を目的とするC末端ペプチド以外のすべてのペプチドに生じさせ、負電荷を帯びたすべてのペプチドを強塩基性陰イオン交換体(SAX)カラムを用いる高速液体クロマトグラフィーによって高度に濃縮するという計画は達成できた。平成23年度にはさらに濃縮効率を高めるため、全カルボキシル基を化学的にアミド化する替わりに、GluCというアスパラギン酸とグルタミン酸のC末端側で切断するプロテアーゼを用いて目的とするC末端ペプチド以外のすべてのペプチドのC末端を酸性度の高いジカルボン酸にして同じSAXカラムに吸着除去する実験を行い、分子量約66,000のウシ血清アルブミンC末端ペプチドの濃縮に初めて成功した。こうして技術的困難のため近い将来プロテオミクスの進展のボトルネックとなるおそれの高いタンパク質の同定を迅速かつ確実に行うため、簡単で高感度のタンパク質のカルボキシル末端(C末端)ペプチドの単離とそのアミノ酸配列解析法の完成を目指すという研究実施計画はほぼ達成できた。方法の実用化に関しては、研究協力者の大阪大学蛋白質研究所の九山特任准教授らとの共同研究により、末端ペプチドを化学的に修飾して質量分析による高感度分析およびアミノ酸配列解析を可能とする方法を確立することで実現の目処がついた。現在、これらの成果をもとにして、さらにタンパク質のNおよびC末端同時解析法を実現すべく、平成24年度から限定的酵素消化と、修飾試薬の安定同位体標識を組み合せた新たな質量分析法による基盤研究(C)「被翻訳後修飾タンパク質のNおよびC末端構造同時解析法の開発」を開始した。
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