研究課題
細胞の非対称分裂に代表される細胞極性は、様々な生命機能の発現の根幹にある重要な現象である。本研究では、出芽パターンの決定に関与する多機能タンパク質複合体(KEOPS/EKC複合体あるいはBud32複合体とも呼ばれている)の翻訳後修飾やタンパク質間相互作用の解析によって、出芽酵母の細胞極性の決定機構を明らかにする。本年度は、以下に述べるような成果を得た。Bud32欠損株での発現差異解析の結果を再検討した。特に翻訳後修飾を網羅的に検出するために、質量差を許容してLC-MSMSの結果を探索する手法を検討した。この方法で、多くの翻訳後修飾を受けたペプチドを検出できることを明らかにした。また、KillerRedを用いて二分子蛍光相補性解析が行えるようにするための検討を行った。最終年度であるので、これまでの結果をまとめ、Geneticsに論文として発表した。Bud32を欠損させるとランダムな部位から出芽が起こることは既に報告されていたが、複合体の構成タンパク質をコードする遺伝子の欠損株を用いた解析から、Bud32を含む複合体が、出芽部位選択に関与することを明らかにした。出芽部位選択には、Bud32のキナーゼ活性が必須であった。Bud32はSch9によってリン酸化されるが、このリン酸化は、Bud32複合体による出芽部位選択には関係していなかった。出芽部位のマーカーであるBud8とBud9のうち、Bud9を欠損させると、Bud32複合体の欠損によるランダムな出芽が観察されなくなったので、Bud32複合体はBud9の局在を制御していると考えられた。実際、Bud32複合体の欠損株では、Bud8の局在は正常であったが、Bud9の局在は異常であった。Bud8,Bud9の局在に関連しているRax2の局在は、Bud32複合体欠損株では正常であった。昨年度に発表したSplit-GFP法による細胞内でのBud8,Bud9とRax2との相互作用を考慮すると、Bud32複合体は、Rax2とBud9との相互作用を制御していると考えられた。
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FEBS J
巻: 278 ページ: 1470-1483
Genetics
巻: 188 ページ: 871-882