研究概要 |
AZ-1は、副腎皮質の層機能分化に関与する因子として同定された。我々の近年の研究によりAZ-1は、副腎皮質だけでなく哺乳動物の全身の血管基底膜に局在して、インテグリンのリガンドとして血管内皮細胞(VEC)の接着・進展活性を示す一方、血管内皮増殖因子VEGFによる血管内皮細胞への効果を阻害することが判明した。本研究は、AZ-1をVECの細胞外モジュレーターと捉え、AZ-1によるVEGF受容体2の細胞外シグナル調節の分子構造基盤を解析することである。 VECはin vitroにおいて、固相化された構造的な細胞外マトリクスを足場として細胞膜上のインテグリンを介して接着する。VECは、精製AZ-1蛋白質を固相化するとインテグリン(α2β1,α6β1,αVβ3)に依存した接着を示した。固相化フィブロネクチン(FN)への接着におけるインテグリンα5β1依存性と異なることから、AZ-1の接着促進活性は特異的であった。この結果はAZ-1が、他の細胞外因子なしでも単独でインテグリン(α2β1,α6β1,αVβ3)と結合して、接着を促進することを示す。ところが固相化コラーゲンI(Col-I)が示すVEC接着促進活性は、AZ-1を固相化Col-Iに結合させると、AZ-1濃度依存的に阻害された。同様に、Col-I上でのVEGFに依存したVECの増殖は、AZ-1を固相化Col-Iに結合させると阻害された。すなわち、構造的細胞外因子Col-Iとその受容体インテグリンの相互作用によるVECの接着促進、および、可溶性細胞外因子VEGFとVEGF受容体2の相互作用によるVECの増殖促進の2つの細胞過程において、AZ-1は阻害能を示した。以上の結果から、AZ-1は、2種の細胞外因子「可溶性因子」及び「構造的因子」がそれぞれの細胞表面受容体と相互作用するとき、両方の過程に関与して細胞機能をモジュレートする新たなカテゴリーの細胞外因子であることが示唆された。
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