研究課題
リガンド・細胞表面受容体複合体モデルにおけるAZ-1の相互作用様式の検証を目的として、AZ-1蛋白質変異体の調製を行った。全長の組換えAZ-1(466アミノ酸残基)については、効率良く発現・精製することが可能であった。しかし、3ドメインの内1つまたは2つ欠いた変異体については、フィプロネクチンN端70k等との融合蛋白質の作製を含めて種々の工夫を試みたが十分量発現させることが困難であった。そのため、複合体との相互作用に関与するAZ-1の機能ドメインの特定に至らなかった。しかし、AZ-1の低分子量基底膜蛋白質としての新しい機能を示す結果がマウス胚を用いた実験から得られた。着床直前胚において、免疫組織化学法によりAZ-1は栄養外胚葉の胞胚腔側内側に検出された。着床後には、AZ-1はライヘルト膜の重要な成分であるラミニンと局在が同一であること、さらに免疫沈降実験により、AZ-1とラミニンは相互作用していることが判明した。この結果から、AZ-1はライヘルト膜の新規な構成分子であることが判明した。一方、子宮側におけるAZ-1の局在を解析した結果、子宮内膜上皮細胞および血管内皮細胞の基底膜に局在することが判明した。特に、胚周囲の子宮側においてはインテグリン群と共局在しており、免疫沈降実験により、AZ-1とインテグリン群との相互作用が判明した。これらの結果、AZ-1は哺乳動物の初期発生においても、胚側においては少なくとも構造的細胞外マトリックス蛋白質(ラミニンなど)と相互作用していること、一方子宮側においては少なくとも細胞表面受容体(インテグリン群)と相互作用していることを示す。従ってAZ-1は多価結合性因子として細胞機能の調節に関与することが示唆された。
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Endocrinology
巻: 153 ページ: 1755-1763