ヒトデおよびウニの受精および胚発生に対する選択的阻害を指標として、植物および海綿動物由来の生理活性物質の探索を行なった。アシタバ種子の酢酸エチル可溶性成分は、16ppm以上の濃度でイトマキヒトデの胞胚形成を阻害することがわかった。阻害活性を指標にしてシリカゲルカラムクロマトで分画することにより、活性成分として1種のポリアセチレン化合物および2種のクマリン化合物を単離した。これら活性物質は、NMRおよびMSスペクトルデータ等に基づき、Falcarindiol、AmmidinおよびJsolemanidinと同定した。また、鹿児島県種子島近海で採取された海綿Theonella swinhoeiのメタノール抽出物にイトマキヒトデの胚発生を阻害する活性が見出された。このメタノール抽出物を酢酸エチル-水で分配した後、酢酸エチル可溶性画分をシリカゲルカラムクロマトで分画することにより、既知ステロイドであるTheonellasterolとともに新規ポリアセチレン化合物を活性物質として単離した。新規ポリアセチレンは、ESIMSでm/z 335および337[M-H]^-に擬分子イオンピークを示したことから、1個の臭素原子を含む分子量336の化合物とわかった。さらに、(-)HRESI-TOFMSの結果から、分子式をC_<17>H_<21>BrO_2と決定した。さらに、IR、UV、1次元および2次元NMRスペクトルデータに基づいて、その構造を決定した。この新規ポリアセチレンは、100ppm以上の濃度でイトマキヒトデの卵成熟を阻害するとともに、ヒトデ胚の胞胚形成を阻害することが明らかとなった。
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