研究課題
前年度までは好気性超好熱性古細菌Aeropyrum pernix K1由来のペルオキシレドキシン(Prx)について立体構造の面から反応スキームを明らかにした。平成22年度は、嫌気性超好熱性古細菌Pyrococcs furiosus由来のPrxについての研究を進め、嫌気性→好気性という進化の過程に抗酸化タンパク質の反応機構からせまることを目指した。ゲノムからPrxの遺伝子を取り出し、発現・精製をし、結晶化条件を探索した。その結果、針状結晶を得る段階までは進んだが、構造解析に適した結晶を得るための条件検討がまだ残っている。過酸化水素を基質とする酵素はPrxをはじめとする各種ペルオキシダーゼやカタラーゼがあるが、その上流に位置する酵素、すなわち過酸化水素を生成する酵素に、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)がある。平成22年度は、A.pernix K1由来SOD(ApeSOD)についてのタンパク質科学的な知見を得た。SODの反応は活性中心の金属イオンの酸化還元サイクルをともなって進行する。FeとMnの両方を金属コファクターとするととができるSODをcambialistic SODというが、ApeSODはcambialistic SODであり、FeよりもMnをコファクターとするほうが活性が高い。本年度は、ApeSODのアポ型・Fe結合型・Mn結合型の立体構造をX線結晶解析により明らかにした。Mn結合型では金属はtrigonal bipyramidal構造をとり、5原子が配位していた。それに対してFe結合型では金属はoctahedral構造をとり、水が1分子加わり、6原子が配位していた。新たに水が配位した場所は基質スーパーオキシドの結合サイトとされており、このことが基質結合阻害を引き起こしFe結合型ApeSODの低活性をもたらしたと考えられる。また、Fe結合型では活性部位近傍のチロシンの側鎖が1Å程度金属側に移動していた。大腸菌SODにおいて明らかになった知見から類推するに、Fe結合型ApeSODにおいては、生成物(過酸化水素)による阻害と類似したメカニズムが働いていることが考えられる。
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