研究課題
1.2本鎖RNAの架橋化反応2本鎖DNAの相補的な部位に生成させた脱塩基部位を架橋する反応に関し、H23年度では2本鎖RNAに対して同架橋化反応が適用可能であるかどうかを調べた。2本鎖DNAと同様に、デオキシウリジン(dU)を相補的な2本鎖RNA鎖の向かい合った部位に有するRNAを化学合成し、ウラシルDNAグリコシラーゼ(UDG)の処理に続いて架橋化試薬を添加することで2本鎖間の架橋化を調べた。その結果、UDGによってRNA鎖中にも脱塩基部位が生じ、それらが架橋化試薬によって連結されて架橋化2本鎖RNAが生成することを確認した。これにより、当該架橋化反応はRNAにも有効であることが証明され、安定な2本鎖RNAの構築に役立つ技術になり得ると考えられる。2.複数のDNA鎖の架橋と応用DNAは金表面など種々の固相上に固定化可能なため、DNAに酵素を結合させることで酵素反応の足場としてDNAを用いることができる。そこで、酵素反応を架橋化2本鎖DNAと通常の非架橋の2本鎖DNA上のそれぞれで行い、酵素反応の進行度合いを比較した。DNAに結合させる酵素には、HRP-ストレプトアビジン融合タンパク質と、ALP-抗フルオレセイン抗体を選択し、ビオチンとフルオレセインそれぞれを導入した2本鎖DNAを合成した。1種類の酵素を固定化する2本鎖DNAと、2種類の酵素を同一DNA分子上に配置する3本鎖からなる架橋化DNAを構築した。各2本鎖DNAを金基板上に固定化した後、酵素をDNAに結合させて酵素反応を行い、反応の進行を走査型電気化学顕微鏡によって評価した。反応の結果、通常の2本鎖DNAは1本鎖に解離して酵素の固定化量が低下したため、酵素による生成物量は架橋化DNA上よりも大きく低下した。本結果によって、同架橋化試薬によって構築される架橋化DNAは、酵素反応の安定な足場として有効であることが証明された。
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