研究課題/領域番号 |
21510242
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研究機関 | 札幌市立大学 |
研究代表者 |
矢部 和夫 札幌市立大学, デザイン学部, 教授 (80290683)
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研究分担者 |
石川 幸男 専修大学北海道短期大学, みどりの総合科学科, 教授 (80193291)
山田 浩之 北海道大学, 大学院・農学研究院, 助教 (10374620)
金子 正美 酪農学園大学, 環境システム学部, 教授 (00347767)
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キーワード | 生物多様性保全 / 高茎湿生草原 / 二次草原 / ハンノキ林化 / 水位低下 / 塩類流入 / fen meadow |
研究概要 |
ウトナイ湖の年平均水位は、観測の始まった1969年には231cmであったが、その後年々低下し、1977年には観測期間中最低の161cmになった。水位はその後増加し、最近は200~210cm程度である。ウトナイ湖北西岸の50年間の群落変化をまとめると1970年代のウトナイ湖低水位が招いたこととして、1962~1984年に起こったハンノキ(湿地)林の増加と高茎湿生草原と湿原の減少という群落変化があげられる。その後はさらにハンノキ林が増加し高茎湿生草原が減少した。年輪測定によるとハンノキの定着は1950-1970に始まっており、水位低下は1970年以前から起こっていた可能性があった。 1948年からおおよそ10年ごとに撮影された空中写真判読結果から、ハンノキ林は内陸側から湖岸側に向けて侵入しており、湖岸側の高茎湿生草原はハンノキ林の拡大にともない消失したことが判明した。高茎湿生草原がハンノキ林の伐採後の二次草原である可能性も検討したが、空中写真判読からはそのような人為撹乱の跡は確認できなかった。 群落・環境解析の結果から、ハンノキ林はより標高が高く、土壌水分が少ない環境に成立していることがわかり、水位低下が近年見られたハンノキ林急増の主原因であることが示された。高茎湿生草原はハンノキ林より標高が低いため水分が多いところに分布したが、窒素や塩類量の少ない低生産的な環境も重要な成立条件であった。ハンノキ辺縁部では、ハンノキ林から高濃度の窒素と塩類が供給されるためにホザキシモツケが著しく繁茂し高茎湿生草原が消失する。 北西岸の水・物質フロー解析のために行ったGPS測量によると、ハンノキ林は地表面標高が高い地域で分布を拡大しており、群落・環境解析の結果と一致した。
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